先日、帝劇の「レディ・ベス」を観てきました。
「モーツァルト!」のDVDを友人から借りてから、2年間近く、密かに山崎育三郎さんが気になっていたのですが、ついに生で観ることができました。
最近はバレエばっかり観ていたので、演者が喋る!歌う!と妙なところで感動してしまいました。笑
帝劇独特の雰囲気にドキドキしながらの鑑賞でしたが、とっても素晴らしい舞台でした。
星座盤を模した円形の舞台装置が真ん中に鎮座しています。演出によって、星空のように見えたり、カジノのルーレットのようにも見えます。
一幕はベスの教育係、ロジャーの歌から始まる。
ベスの生い立ち、母の死や姉との確執がわかりやすく表現されています。
山口さんは「モーツァルト!」のコロレド大司教役で知っていたのですが、とても素敵な歌声です。会場中を包み込むような、暖かい声。
場面は変わって、町の人たちとロビンの歌「人生は一度きり」。
ついに、生育三郎さんです!テレビで見るより格好良かった…!
ロビンの衣装のせいか、ピーターパンのような雰囲気がありますね。どことなく浮世離れしているような。ダンスがキレキレで目立っていました。
花總さんは本当に可愛らしくって、可憐!お家に帰って、年齢を調べてみて驚きました。ベスは19歳という設定でしたが、全く違和感がありませんでした。目がキラキラ輝いていて、華奢で、素敵すぎました。
男装して、町のパブにもぐりこむところ、お気に入りのシーンです。花總さんの華奢さが目立って、守ってあげたい〜!と客席で悶えていました。ロビンも同じ心持ちのようでしたね。
当初は、ベスとロビン恋に落ちるの早くない?と思っていたのですが、一生に一度の恋ってきっとそういうものなんですよね。プロセスなんて必要ない。自分の立場なんてどうでもよくなってしまうくらい、命さえ簡単に投げ出せるくらいに、劇的なもの。
王女と流れ者の詩人という立場の違いもあって、二人の恋には障害だらけ。でも、「何故好きなのか?」の時の二人があまりにも幸せそうで、彼らにとっては障害さえも恋を燃え上がらせる燃料でしかないのかな、なんて思いました。
「レディ・ベス」も「クレオパトラ」も一人の女性の宿命を描いたお話だと思います。
ただ、「レディ・ベス」は一人の女性から女王への変化を描いているのに対し、「クレオパトラ」は女王が一人の女性へと変わっていく物語です。
どちらも、恋がターニングポイントとなっている。恋を知ってしまった、誰かを愛する喜びを知ってしまったけれど、女王という立場から逃れることはできない宿命。
権力のためなら形振り構わない、冷徹な女王が恋によって変わっていき、恋人の死によって自らの命も終焉と向かっていく様子。
全く正反対の二つの作品ですが、運命に翻弄される人間のままならさを描いているという点においては、共通するものがあるのだと思います。
髪に挿したイモーテルの花をロビンに渡し、自らの宿命を一つの国家に捧げたベスの姿は本当に神々しかった。
ロビンはその後どうなったんでしょう。一輪の花だけをよすがにして、その後を生き続けたのか、すんなりと他の運命の恋に落ちてしまうのか。
どんなに忘れたくない恋も、月日とともに少しずつ記憶は薄れていく。それでも、私は二人の愛を信じ続けたいと思いました。一緒にいることだけが愛の形じゃない。離れていてもお互いを一番近くに感じられることだってある。
「傷ついた翼」の一節、
愛のぬくもりを 忘れはしない
いつ どこにいようと
空 見上げれば
二人の魂 天を舞う 翼を広げて
がすべての答えなんだろうなと思います。
一回しか観劇できなかったことが本当に心残りです。
カーテンコールでロビンがベスを優しくエスコートしていたのを見て、涙が出ました。いつか二人がそうやって手を取り合える日が来ればいいな…と。
初めての帝劇でしたが、劇場の雰囲気といい本当に素晴らしかったので、これから定期的に見ていきたいと思います。