2018/10/12,13,14 K-BALLET COMPANY「ロミオとジュリエット」

 

ロミオとジュリエット、浅川さん宮尾さんの回を2回、美奈さん雅也さん回を1回ずつみました。

記事を書くのが遅すぎて、箇条書きみたいになっちゃった…ご容赦ください。

 

12日

 

 

幕が上がって宮尾さんが現れた瞬間、わー!ロミオ!となりました。普通に10代に見える、宮尾さんすごい。お育ちの良い、穏やかな青年という感じ。
前に見たときよりも、断然動きが軽くなっていた気がする、今回の公演にかける宮尾さんの気持ちが垣間見えたような…

 

ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオ3人で踊るところ。ベンヴォーリオのお調子者感が強かった気がする。すごく好きだった振り付けがなくなっていて、ちょっと悲しかった。石橋マキューシオがロミオを小突くところ、思いっきり小突くんじゃなくて優しめだったのが何かよかった。仲の良さが伝わってきます。

 

ジュリエットの登場シーン。浅川さんはとにかくかわいい。温室育ちの天真爛漫な女の子という感じ。

 

遅沢さんティボルトの悪役感、憎たらしさは天下一品。最高。

浅野さんのロザラインは、松岡さんに比べてフェミニンな感じ。ロザラインとティボルトが付き合っている設定、ときめきました。物語の流れ的にティボルトは悪役なんだけど、その悪役とされる人にも日常があって、誰かを大切に思ったり誰かのために涙を流したりもするんだよな…って。

廉君のパリスがとにかくかっこいい。育ちの良さ、人の良さが滲み出てる。
パリスってすごく難しい役柄だと思うんですよね。
ジュリエットが仮死状態になっているときの、パリスの悲しみに説得力がないと、彼がロミオに剣を向ける理由がなくなっちゃう。短い登場シーンの中でどうやってジュリエットへの愛情を出していくのかがすごく大事なポイントだと感じた。12日の廉君のパリスはジュリエットを思う気持ちがすごく良く出ていた気がします。

 

 

宮尾さん、浅川さんの表情や表現力はやっぱりすごい。プリンシパルの演技、って感じでした。特に、薬を手にしてからのジュリエットは壮絶だった。精神が張り詰めて、研ぎ澄まされて、ピリピリと音を立てるような、その音がこちらにも伝わってくるような感じ。人間を通り越して動物的ですらあったかもしれない。
パリスへの拒絶があまりに冷酷で、パリス推しの私は辛かった…パリスじゃだめ…?

 

リフトの安心感はピカイチだし、2人で踊るシーンは何もかもが美しかった。
ただ、これは完全に私個人の問題なのだけど、次の日のことが気になりすぎて、完全に集中しきれずに終わってしまった…
あと、雅也さんが群舞にいなかったのが悲しかったです。群舞でのわちゃわちゃ大好きなので…

 

 

13日

 

 

キャストが発表されてから、ずっと楽しみにしていた雅也さんのロミオ。雅也さんの優しい踊りや上品な身のこなしが役にぴったりで、本当に素晴らしかったです。

 

雅也さんの踊りの滞空時間の長さ、宙に浮いている時の身体のラインの美しさ、脚のライン、腕のしなやかさ、本当に素晴らしい。どこで誰と踊っていても目立つし、群を抜いてる…!柔らか、かつキレのある動き、足さばきの軽妙さ、全てが最高です。

ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオ3人の仲良し感、わちゃわちゃした感じが最高でした。ファーストキャストの3人組よりも年齢や身長が近いからか、より一体感が感じられます。特に佐野さんのベンヴォーリオ、弟感があってとってもよかった。

 

序盤のキャピュレット家とモンタギュー家の小競り合い→領主登場の流れ、この時のロミオは両家の対立構造に強い嫌悪間を抱いているように見えました。キャピュレット家だから嫌い、というわけではなく、自分が大切に思っているモンタギュー家にとって害のある存在だから憎んでいるという感じ。平和や融和を望んでいるのに、そうならない現状に思うところがありそうな…両家が向かい合って並ぶシーン、ロミオの顔がすごく険しかったのが印象的。
マキューシオやベンヴォーリオとは違って、好戦的ではない気がしました。ただ単に、嫌悪という感情が心に染み付いているのかな…きっと生まれた時からキャピュレットを強く意識せざるを得ない環境だったんだろうな…という感じ。後にジュリエットと出会って、キャピュレット家に対する思いが変わっていく、その時との対比がすごくしっかりしているなと思いました。

 

ロミオとジュリエット、2人が出会うシーン。2人の出会いは運命以外のなにものでもなかった、そう思わせる強い説得力があったと思います。2人の顔つき、表情がどんどん変わっていく。ロミオとジュリエット、2人とも家族に愛され、友人にも恵まれている。だけど、当人ですら気がつかないくらい奥底に孤独を抱えていて、それを分かち合えるのが2人だった、という感じ。ロミオが仮面をとって、2人が向かい合った時。最初はぎこちなく、それでもすぐに伸び伸びと踊り出した時。あまりの初々しさにどきどきが止まらなかった。

 

2人の幸福が最高潮に達した、バルコニーのパドドゥ。あまりにも美しくて、涙が出ました。雅也くんのピルエット、跳躍、踊りの全てが本当に綺麗で、夢を見ているよう。
2人がすごく幸せそうで、笑顔に一点の曇りもなかった。あんなに幸福で美しい時間なはずなのに、この後の流れのことを考えると苦しくて仕方がなかったです。

 

マキューシオとティボルトの喧嘩を、ロミオがすごく苦しそうに見ていたのがとても印象的でした。ロミオはジュリエットとの出会いを通して、キャピュレットとの融和を図りたいと思うようになっていたんだろうな…

それでも、状況は最悪の方向へと転がりだす。マキューシオの死後、ティボルトに剣を向けるロミオには明確な殺意が見えました。あんなに怖い顔をした雅也さん、初めて見た。一種の錯乱状態にあったんじゃないかな、と思うくらい。ロミオの目が完全に変わっていた。ティボルトを刺し殺したあと、自分がしたことに呆然としながら、ベンヴォーリオに抱えこまれるようにして去っていく姿が悲しすぎました。もう二度と幸せだったころの自分には戻れない。ベンヴォーリオはあの瞬間に、マキューシオだけでなくロミオをも失っていたのかもしれません。ベンヴォーリオは2人の仲間を失って、これから先の人生どう生きていくんだろう…そう思わずにはいられませんでした。

 

寝室のパドドゥ、2人が最後に過ごす時。ひたすら切なかった。リフト安定していてとてもよかったです。

 

 

ジュリエットの死を嘆くロミオの打ちひしがれた表情、胸にくるものがありました。本当に心情表現が上手になったと思う。

ジュリエットの嘆きは言わずもがな、見ていて本当に苦しかった。美奈さんのジュリエットは浅川さんのジュリエットと比べて、感情の起伏はそんなに激しくなかった気がするんだけど、それが私にはすごく刺さりました。少女から大人の女性へ。ロミオと出会って、彼を失って、自らも死を選ぶ。一つ一つの表現が抑制されながらも丁寧に描かれていく。すごく素敵なジュリエットでした。

 

どこまでも美しい、本当に素晴らしい公演でした。シェイクスピアの物語の世界を実際に覗かせてもらっているように感じました。原作の詩的な言葉選びや(もちろんお世辞にも綺麗とは言えないような言葉もたくさんあったけど)、短い期間を駆け抜けた2人のあまりにも激しい恋が、丁寧に美しく紡がれて昇華されていったと思います。ぜひ再演を…

 

 

14日

 

 

雅也さんのロミオデビューを見届けたので、気持ちを切り替えて見ることができました。浅川さんの引退公演ということで客席はほぼ満席。お客さん側の熱量がすごかったです。

12日の公演よりも、さらに気持ちがこもっていて、特に浅川さん、宮尾さん、遅沢さんの3人がすごかった。他のキャストの方の演技をほとんど覚えていないくらい…笑

 

12日に踊りのことや、雑感は書いたのでここでは総括を。

浅川さんの、ステージの上で起こっている出来事が全て「今」起きている出来事に思える、思わせる「今を生きる」力が本当に素晴らしかったです。うまく表現できてない気がするけど…
舞台の上でロミオとジュリエットは本当に生きているようでした。だから、話の結末はわかっているはずなのに、この先どうなるの?っていうハラハラ感がずっとあって。
ジュリエットが幸せそうにしている時は、観客席にいる私も幸せで、ジュリエットが悲しんでいる時は、私も悲しかった。他の感情を挟めなかった。舞台の上で浅川さんは浅川さんじゃなくて、確かにジュリエットでした。宮尾さんはロミオ、遅沢さんはティボルト。この3人は2018年の10月14日、舞台上で自分とは違う世界の住人になっていた気がします。

浅川紫織さん、本当にお疲れさまでした。素晴らしい舞台の数々をありがとうございます。

 

キャスト同士を比べてあれこれいうのは違う気もするんだけど、浅川さん宮尾さんの舞台は「今」であり「現実」で、美奈さん雅也さんの舞台は「過去」であり「美しい物語」だったと感じました。これは完全に優劣云々の話ではなく好みの問題で、現に私は後者の「ロミオとジュリエット」が大好きでした。

この舞台が終わって、ずっと考えていたことがやっと文章化できました…笑

次はドンキ!楽しみです。